修了生インタビュー
- 北口 善教
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2022年9月現在
西本Wismettacホールディングス 会長室 副室長
世界情勢を、人間の営みとして捉えなおす機会
当時勤務していた農林水産省からの参加でしたが、17期で最年少だったこともあり、同窓の皆様のみならず、講師の皆様に対しても、ずいぶんと生意気な受講生であったろうと思います。EMP受講後、コンサルファームを経て、現職に転職しました。受講から5年経っても、不惑の年に満たない若輩ですが、比較的大人数の組織の舵取りをする立場になり、日々、日本型組織のマネジメントの難しさを実感しています。そうした中、日々の試行錯誤の中に、EMPで議論して得た思考が生きていると感じています。
EMPに参加する当初の、私の目的意識としては、学生時代に手痛い敗北を喫した物理・天文分野に再挑戦することでした。講師の方々の懇切丁寧な講義のおかげで、導入のレベルとしては、その目的は果たすことができたものと感じているのですが、EMP受講後にパワーを発揮しているのは、むしろ人文系の講義で学んだことが多いように思います。
17期受講当時は、Brexitやドナルド・トランプ前米国大統領の就任といった、グローバリズムの停滞、ナショナリズムや宗教的な思想の再興を印象付ける出来事が頻発していた世界情勢の中にありました。我々の期においては、現代社会においては、他者とのつながりにおいて「よく生きる」こと追求する世界観に移行しつつあるという理解が、EMPに通奏する一つの結論として共有されていきました。西洋哲学が追求してきた幸福感に対するアンチテーゼのような理解であり、自然科学が、「唯一の宇宙」であるユニバースの成り立ちの必然性を追究した結果として、我々の宇宙が偶然の産物であることを理解し、マルチバースという理論に行きつかざるを得なくなり、研究の動機において自己矛盾のような状態に陥ってしまったことのアナロジーとして、妙にリアルに感じたのを覚えています。
同期生との深い議論に加えて、EMPの多様なテーマを組み合わせながら、自信の思考を体系化していく過程は新鮮でした。特に「よく生きる」こととは何か、宗教や思想史について思考を重ねたことは、私にとって、マスであれ、特定のクラスターであれ、現代社会に生きる人々の不安やモチベーションへの想像力を高める貴重な契機になりました。EMPで自分なりに体系化した思考回路は、公私で自覚的に用いており、仕事では、組織マネジメントや、市場変化に対するバックボーンのある理解に明確な効果を発揮しています。
EMP修了後、私のキャリアパスは大きく変化し、世界はCovid-19の流行を経て、ロシアによるウクライナ侵攻を経験し、ますます混とんとしてきました。私が人生をかけて携わっている食は、世界の誰にとっても喜びとなりうる稀有なコンテンツであり、ますます苦しくなりゆく日本にとって、残された数少ない強みでもあります。EMPで学んだことを生かしながら、世界に何らかのポジティブな変化をもたらせるのではないかと、私も日々模索しながら全力でチャレンジし続けています。